編集者は全員原稿依頼に振込時期を書け

ライターとして仕事を始めて10年、編集としては6年くらいになる。

その過程で、当然ながら無数の「原稿依頼」を送受信してきた。パターンはさまざまだ。「こういうの興味ないですか?」というような軽い質問から始まるものもあれば、個人宛に「こういう内容でお願いしたい」と企画書まで作って添付してもらえるパターンもあった。

別に、依頼に「正解」はない。編集者との関係値や、その媒体とやってきた仕事の数などによっても良し悪しは変わるからだ。ただ、「最初にこれを教えてもらえないと困る」はわりとある。今回はその話がしたい。

頼むから最初に原稿料と振込時期を教えてくれ

はい、要約するとこういうことになります。本当に、原稿料すら教えてくれない仕事というのが、意外とあるんですよ。正直無料でも引き受けちゃう仕事というのがなくはないというのは事実だが、それでも原稿料がないならないで最初に「申し訳ないが0円です」と言ってほしい。とにかくこっちからもう一往復メールで「原稿料っていくらになりますか?」と送る手間をなくしてほしい。

そしてかなりの確率で書かれていないのが「振込時期」である。これフリーランスにとって死活問題なんですよ。来月もらえる2万円と再来月もらえる2万円では意味が変わってきます。「そのスケジュールで原稿料をもらえるのが来月だったらはっきり言って別の仕事詰めたほうが生活設計的にいい」ということもあるし、「今月いくらもらえるか」の目算がずれることが死活問題になってくるような人間もフリーランスにはたくさんいる。

そして振込時期とは当然ながら「いつ振り込まれるか」という時期の目安を指すわけだが、例えば「2ヶ月後です」だけだと「原稿を出してから2ヶ月後」なのか「請求書の締日から2ヶ月後」なのか「公開・刊行から2ヶ月後」なのかがわからないので、そこも明記してほしい(そこが明記されていないと意味がない)。さすがに再来月でしょと思って仕事したら「あ、お支払いは刊行から2ヶ月後なので、つまり4ヶ月後ですね」と言われて膝から崩れ落ちることもあるわけです。なので、とにかく編集者諸氏は原稿依頼に振込時期を明記すべきだ。これもまた明言されないまま仕事するのもつらいし、このためだけにメールをもう一通書くのも「なんか銭ゲバみたいに思われてそうだな」という感じで嫌なものなのだ。

実際に編集者として原稿依頼をかけるときのテンプレ

以下、私が原稿依頼をかけるときに使っているテンプレートを紹介します。

形式だけ同じにして、企画名や企画内容は架空のものにしてある。

必ずしもこれが正解だというわけではないが(これより丁寧な原稿依頼はいくらでもある)、参考にしてほしい。

 

・企画名:
「少年漫画のヒロイン分析(仮)」
・内容:
今アツい少年漫画作品をいくつかピックアップしていただき、そこに登場する女性キャラクター(特にメインヒロイン)がどのように描写されているのかを、フェミニズムの立場から論じていただく批評記事です。
3作品ほど取り上げて、それぞれ1000〜1500字ほどで論じていただく形式を想定しております。
記事イメージは,このような雰囲気です。
(URL)
(URL)
・取り扱う作品について:
お任せいたしますが、なるべく出版社はバラバラにしていただけるとありがたいです(ジャンプから1作品、チャンピオンから1作品……など)
・字数:
4000〜5000字程度
・原稿料:
20000円(+税)
・お振込時期:
原稿拝受から2か月後
・締切:
いったん○月○日でご相談できないでしょうか?(ご都合に合わせて調整可能です)

 

これが私が仕事をする中で考えた「現時点での最適解」である。

今のところこれでトラブルが起きたこともなく、むしろ比較的「説明がはっきりあってありがたい」と言われる場合のほうが多い。

編集者のみなさま、どうか原稿料と振込時期を最初に教えてください。最初に確定できない場合はその旨を教えてください。そこが明記された原稿依頼、いつでもお待ちしております。

 

※追記:

言い忘れていたが、原稿依頼以上に原稿料と振込時期を教えてもらえないのがイベント仕事である。イベントの謝礼金は無料から数万円、手渡しから振り込みまでいろいろあるので本当に読めず、それを教えてもらえないのは本当に困る。みなさんお願いですからギャラと振込時期を書いてください。頼む。

 

※追記2:

下請法のことをすっかり書いていなかった。下請法では納品から60日以内に支払いをする必要がある(ここまではもともと知っていた)。そして先程教えてもらったのだが、支払いがそれを超過する場合、利息を請求できるとのことである。これはマジで知らなかった(発注側としては会社ルールによってきちんと下請法を守れていたからという理由でもある、が、勉強不足だった)。何よりこの業界、下請法を守らない案件が多すぎるので、いちいち言ってられない(言って仕事が減ると困る)という状況がある。それも含めて改善されてほしい。

 

※追記3:

さらに情報提供があり、2026年からは60日後に支払わないと委託側に罰則が発生するとのこと。私の場合、発注側としては依頼の段階で受領から2カ月後という目安を伝えたうえで、返事をもらって締切が確定した段階で発注書を作り、支払日(60日後)を明記して送付している(依頼メールと発注書は別だ、念の為!)。しかしフリーランス目線で言うとここまでやってくれている媒体は正直多くなく、全然守られてなくない?というのが実感である。