#新星急報社 さんでハンジ・ゾエのイメージアクセサリーを作ってもらった

※『進撃の巨人』のネタバレを含みます。

さまざまなもののイメージをアクセサリーに起こしてくれるハンドメイドアーティスト・新星急報社さんの受注会に参加してきました。

shinse.thebase.in

もともと存在は知っていたし、Twitterでは(おそらくそれなりに長い間)相互でもあったのですが、いかんせんアクセサリーにあまり興味がなかったので、これまで受注会のお知らせがあってもスルーを決め込んできました。

アクセサリー、なくしそうだし、そもそも身体に何か重いものがまとわりついているのは好きではない。これは確かにそうなのです。

しかし最近になって、私は周囲の友人に影響されて、当社比で服にお金を使うようになりました。ちょっといい服をメルカリで買うのがたまの贅沢になったのです。するとなんとなく、服にお金を使うのにアクセサリーを何もしないのはちょっともったいないのではないか、という気が湧いてきました。せっかくヘアスタイルもベリーショートなんだし、耳に何かついていても、よくない? あと顔に近いところにアクセサリーがあったほうが、顔への視線が分散するんじゃないか?

そう考えていたころ、服もアクセサリーも大好きな友人・呉樹直己に新星急報社さんの受注会に行かないかと誘われました。なんでも呉樹は自分のイメージする理想のアクセサリーを新星急報社さんで作ってもらったらしい。他の人は聞くところによると、自分のキャラクター解釈を持ち込んで、それをアクセサリーにしてもらっているようだ。これは……やってみたいぜ!

というわけで、行ってきました。

●オタク、ハンジさんのプレゼンをする

まずはキャラクターについてのプレゼン資料を作ります。今回は私が人生の目標としている人物、進撃の巨人』のハンジ・ゾエさんについて考えていくことにしました。

ハンジさんにしようと思ったのは、人生の指針となる人物の視線を常に身のそばに置いておきたかったからです。私はマジで「ハンジさんのように生きる」を一つの目標にしています。『進撃』については以前長い批評を書いた時に感極まってハンジさんのマグカップを買ったりシールを買い込んであらゆる貴重品に貼ったりしていたのですが、それだけでは足りなかったのです(これを書いているPCにも、スマホにも、ハンジさんのシールが貼ってあります)。

生活にもっとハンジさんが……欲しい!!!!!

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上記の記事は全部で2万字です。

しかしながらオーダー会は1人1時間です。あまり長い資料を読んでもらうわけにはいきません(案内によると、10分以内に読める分量が目安だそうです)。

なるべく簡潔に、要点のみを押さえて、自分なりに「基本情報」「好きなところ」「名場面」を整理した資料を作りました。

『進撃』のあらすじはほぼ説明していません。超有名タイトルなのでなんとなくの筋書きはご存じだろうと思ったのと、キャラ解釈をモノに起こしてもらう上で、『進撃』の長く複雑な話を全て説明するのはむしろノイズになるのではないかと思ったからです。

重要なのは自分にとってのハンジ・ゾエがどのように輝いているかだ、と意識しながらまとめていきました。

以下、貼り付けます。(実物は原作のスクリーンショットを引用していますが、ここでは割愛しています)

 

ハンジ・ゾエについて

基本情報

諫山創進撃の巨人』の登場人物

9月5日生まれ

170cm 60kg

目の色:ブラウン

調査兵団第四分隊隊長→第十四代調査兵団団長

(巨人の跋扈する街の壁の外を調査しにいく集団の、幹部の一人)

物語の途中で隻眼になる。

ゴーグル(メガネ)がトレードマーク。

好きなところ
  • 根底に憎しみがありながら、好奇心の方を選んだ人である。

└最初は巨人への憎しみから調査兵団を志望したが、次第に巨人に対する興味が湧き、巨人という生き物に対する純粋な関心と憧憬を動機として動くようになる。

  • 自分が不得手としていることであっても、必要があればそれを行動に移すことができる。

└もともとは協調性のない人物だが、エレンによる虐殺を止めるため、自らが中心となって人びとをオルグする選択を取る。

└拷問は自分で行い、まだ子どもといえる年齢の主人公たちには手を出させない。

  • 感情的な人物で、作中怒ると最も怖いキャラクターとされている。

└怒りのエネルギーを強く持った人物である点に惹かれる。

  • 死者との対話を続けていた人物である。

└ハンジが重要な決断を下すとき、そばには死んでいったはずの調査兵団の仲間たちが立っている。ハンジが死んだときも調査兵団の亡霊たちが迎えにきた。

  • 絶望的な状況であっても、疲れ果てていても、最後まで希望を捨てない人物である。
  • 常に対話を試みようとする人物である。
名場面
  • 「我々はやるしかないんだよ… みんなで力を合わせようってヤツを」

絶体絶命の危機に陥り、一度は弱音も吐いたハンジだったが、やがて「自分だけ蚊帳の外で見ていることはできない」と再起し、これまで敵対していた相手に対して手を組もうと提案する。「ってヤツを」は、『進撃』においては特にやりたくないこと・不本意なことを口にするときに使われる表現。

  • 「…疲れた …いや まだ調べることがある」

兵政権のトップとして追及を受ける中、へとへとに疲れ果ててなお自分の果たすべき使命を思い出して立ち上がるところに、ハンジの魅力がある。

  • 「虐殺はダメだ!! これを肯定する理由があってたまるか!!」

みなが自分の故郷を救うためなら虐殺も已むを得ないのではないか、という方向に傾いていく中、ハンジは強く虐殺を止めることにこだわる。

  • 「この島だけに自由をもたらせればそれでいい そんなケチなこと言う仲間はいないだろう」

調査兵団の死者たちの意志を受け継ぎ、背負う者としての覚悟が詰まったセリフ。

  • 「だから… 会いに行こう わからないものがあれば理解しに行けばいい」

これまで自分が暮らしてきた土地が島であり、人類が絶滅したと思われていた外の世界には未知の人たちがいて、自分たちを憎んでいる――それが発覚したとき、まず対話をしようと試みたのがハンジであった。

  • 「…やっぱり巨人って 素晴らしいな」

巨人の群れによる虐殺を足止めするために一人で仲間を見送ったハンジが、死の間際に発したセリフ。自分が絶対に死ぬとわかっているときに、目の前にいる生き物の美しさをありのまま受け止める。怒りと好奇心で生きてきたハンジが最後に意味を見出すのは好奇心の側であった。こののち、ハンジは焼け落ちて命を落とす。

 

……以上のような内容を、コピーして2部用意し、お見せしました。

新星急報社さんには「資料を2部印刷して持ってきてくれた人は初めて」「資料がわかりやすい!」と言っていただけました! うれしい!

●実際に作っていく

最初にパーツは金がいいか銀がいいか聞かれます。私は金のほうが似合うと自負しているので、金でお願いしました。そして「どんなボリュームがいいか」を確認されました。私はイヤリングを希望していたので、まず重くなりすぎないもの、そしてそれなりにボリュームのあるもの、というのを希望しました。

キャラクター説明の後に「お見せしたいパーツがあるんです」と言われて差し出されたのが、ハンジさんの目の色をしたジルコンの原石と、それを磨いた小さなパーツでした。メモをもとに話を再構成すると、こういう感じです。

「ジルコンの原石は中に不純物がたくさん入っていて、一見地味な石なんです。でもそれを磨くと、金剛光沢というダイヤモンドに似た強い光り方をする石になります。この『一見地味な石を磨くと違ったものが見えてくる』というのが、ハンジさんの好奇心を象徴するパーツになるかなと思いました。また、金剛光沢の多面的な輝きも、壁の外の輝きや、ハンジさんの多面性、一筋縄ではいかない感じにつながるかと思います」

う〜ん……いい!!!!

でもこの時点ではまだアクセサリーとしてのイメージが湧いていません。今度は私が準備してきた話をします。

もともと新星急報社さんのアクセサリー写真で見つけた、ぜひ使いたいパーツがあったのです。それがシェルでできた両手のパーツでした。

真夜中の伝えそびれたコーヒーのイヤリング | 新星急報社

↑このアクセサリーに使われていたパーツです。

オタクの解釈的には、ハンジを超えて調査兵団の話にもなってくるのですが(というか「理解することをあきらめない」という同じ意志を持つアルミンのイメージも流入する)、パラディ島の人びと/調査兵団にとって好奇心の対象であった海を象徴する貝殻という素材と、敵対する人たちの手を取って繋げたハンジの仕事、そして武器を握る大事な部位、というイメージを込めて、このパーツが最適であると判断したものです(ここまで一息)。

オタクの主張は笑顔で許容され、シェルパーツも使うことになりました。それから提案されたものは順番がうろ覚えなので、呉樹直己が残してくれたメモの順序に従って書き起こしてみます。

(今回痛感したことなのですが、お話をしながらメモを取るのは非常に難しいので、友人と2人で受注会に参加し、片方が話している間もう片方がメモを取る、という形式にするとあとでブログなどの記録が残しやすいと思いました。)

  • 歪んだ輪(内輪)……採用

小さめの金の輪です。ポンデリングみたいな感じでぼこぼことしています。

自分の理念を通すことが集団の利益(虐殺の阻止)になっていく、という展開を輪の形状で表してみてはどうか、とご提案いただきました。よく見ると歪んでいる感じの円のパーツも同時に出していただきましたが、ぼこぼこの円を見た瞬間にハンジがこれまで敵対していた人たちとともに火を囲んだときのあのいびつな輪が想起されたので、ぜひこちらを使ってください、とお伝えしました。

  • プラスチックに金属をメッキしたビーズ……不採用

見た目は金属だが実は軽い、というパーツ。好奇心を持って触らないと重さがわからないところがハンジさんらしいのではないかとご提案いただきました。デザインがあまり好みではなかった(金パーツでまとまりすぎる感じがした)ので不採用としましたが、自宅に帰って風呂に入っているときにふと「見た目が重そうなのに持ってみると軽いって……巨人の頭じゃん!!」となり、時間差で興奮しました。また作る機会があったら採用したいです。

  • 大きい歪んだ円……採用

自分の行動で世界を変えていくハンジさんの姿勢を、内側から外側への広がりとみなし、大小のフープを重ねてみてはどうか、と提案を受けました。最初は正円を重ねてもらいましたが、「歪んだものはありますか?」と聞いて歪んだ円を出してもらいました。内側の円が世界を変えるための小集団なら、外側の円は世界だろうと思ったので、世界の不条理さを歪みに見出したかったからです。

最初は円の内側に手が収まる感じでしたが、パーツの組み合わせを調整して、円の外に指先がかかる感じにしていただきました。世界の内側で留まるのではなく、世界の外側に出ていくのが調査兵団なので……。円の中で伸びる手はエンブレムっぽさもある、と新星急報社さん。確かにそれっぽい。

 

ここまででかなりイヤリングの形は整ってきていたのですが、もっとアクセサリーっぽさが欲しくて、大きい石はないですか?(安直)と聞きました。ジルコン以外でハンジさんっぽい石、と考えてもらって、いくつか候補をいただきました。

  • カルセドニー……採用

母岩ごと削った水晶です。水色、透明、茶色、白、黒が入り混じったマーブルカラーです。海の雰囲気もありつつ、多面的な感じの石だと説明を受けました。いろいろな色が入り混じって一つになった石、という点にハンジがオルグした抵抗の輪を感じとり、採用としました。私はハンジが虐殺に抵抗するために人の輪を繋げたという点がものすごく好きなので、ここを押し出したデザインにできてうれしかったです。

また後から考えたのですが、明るいベージュや白にところどころどす黒いものが混じっている石だったので、怒りや憎しみからその挑戦を出発させたハンジさんの暗い部分もイメージできて良いな……と思いました。一言で説明できない混沌とした色味である点も、ハンジさんらしいです。

個体差が大きかったので、なるべく混じり気の多そうなものを選ばせていただきました。

  • ラリマー……不採用

宝石を砕いた破片を銅でもう一度固めて削った石のパーツです。バラバラのものを繋ぎ合わせているところや、海を想起させる水色である点からお勧めしてもらいました。が、海のイメージが強くなりすぎるとアルミンのアクセサリーになってしまいそうだったので、やめました。

  • 化石珊瑚……不採用

化石になった珊瑚をビーズに削ったものです。黒や灰色、白っぽいものがありました。これも太古のロマンを感じさせ、ハンジさんのキーワードである好奇心を煽るような石だなと思いました。ただ見た目が地味めで、私が期待する「アクセサリー感」と違ったので、不採用にしました。

 

●そして完成へ……

これで全体がまとまりました!

以下が出してもらったパーツと、それを仮に組んだ様子です。


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これを組み立ててもらって、こうなりました。

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か、かわいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!

写真がいかんせん下手くそでピンボケっぽくなっているのが申し訳ないのですが、めちゃくちゃかわいいです!

世界を表す歪んだ輪の外側には磨かれたジルコンと混じり気の多いカルセドニー。これはハンジさんの原点である好奇心や憎しみを思わせますし、さまざまな人を組織して困難に立ち向かったこともイメージさせます。

そこからさらに、急拵えながら世界が必要としていた連帯を示す無骨でいびつなぼこぼこの内輪、無骨なジルコンの原石が繋がり、外輪に届く手のシェルパーツへ至ります。

手は武器を握るものであり、他人との縁を繋ぐものであり、死者のために祈るものです。自分の手で世界を確かめに行ったハンジ・ゾエという人の生のまたたきを感じます。(私は本気の目でこれを書いています。)

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たった1時間でこれだけ鑑賞しがいのある「私のハンジ・ゾエ解釈」を立ち上げてくださった新星急報社さんには、本当に深く感謝しています!

みなさまも新星急報社さんに己のキャラ解釈をぶつけてみてはいかがでしょうか。きっと想像以上の答えが返ってくると思います。

※一応注記しておきますが、これはPR記事ではなく、すべて私の趣味で書かれています。